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たんす屋でござる。 呉服問屋3代目の成功哲学

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ブックオフでふと手にした本。それが、”たんす屋でござる。 呉服問屋3代目の成功哲学”でした。

 

たんす屋でござる。 呉服問屋3代目の成功哲学

なぜ興味を持ったかというと、呉服問屋という全く知識のない業種での成功哲学とは何なんだと気になったからです。実際、読みだしていくと、かなり内容の濃い話である事が分かりました。そして、いつのまにか読む事の夢中になっている自分がいました。


最近読んだ成功哲学が書かれた書籍の中でも、学びの多かった書籍の一つです。

 


環境に言い訳しない

この話の勉強になるところは、環境を言い訳にしないという事です。この書籍の著者は、中村 健一さんです。中村さんは、リサイクルきもの「タンス屋」の社長であり、東京山喜の3代目社長です。


なぜ、この書籍が勉強になるかと言うと、環境に言い訳をしない事が挙げられます。


多くの場合、ビジネスが成功しない理由に環境を言い訳にする人が多いです。実際、環境が悪ければ、ビジネスは失敗するでしょう。しかし、目の前にある環境をダメなまま放置するのか、変えようとするのかで、大きな違いが生まれます。


中村さんは、間違いなく改革を起こし、ビジネスを成功させた人です。


呉服問屋の3代目として、様々なチャレンジを繰り返していきますが、衰退業種と呼ばれる「呉服=きもの市場」において、四苦八苦していました。


実際、私も着物は非日常的なものであり、よほどの事がなければ着るものではないという認識になっています。実際、特殊な環境の人を除いて、着物を着る機会は、成人式や結婚式くらいじゃないかというレベルです。


そして、着物は自分で着るのも大変だし、高価なイメージがあり、着物を着るという事は稀な事だと思っていました。


実際、嫁に聞いたら、子供の頃におばあちゃんがお祝いで振袖を購入してくれたそうですが、高価だったイメージがあるそうです。


しかし、今は”リサイクルきもの”の普及によって、とても安い価格で着物を購入する事ができます。この”リサイクルきもの”という新しいビジネスを普及させたのが、かく言う、中村さんだったのです。


当時は、きもののリサイクルはあったものの、それほど普及していなかったそうです。そして、タンス屋ができるまでは、東京山喜として、呉服問屋として、様々な戦略を立て、4年の間、毎年年商を4億円以上増やし続けたそうです。


右肩上がりで売り上げがあったのも、よりよい物を作る為に中国生産を拡大したり、様々なアイデアによるものでした。


しかし、さらなる売り上げ目標(40億円突破)を掲げた5年目に、一気に年商30億(20%ダウン)まで減少したそうです。その原因は、大手得意先の信用不安や倒産などによるものでした。


東京山喜も赤字に陥り、当時、中村さん自身も”商売替えもやむなしと思った”とあります。当時、お客様といえば、専門小売店、百貨店、問屋であり、エンドユーザーの声を聞く機会はなかったそうです。


そして、直接、消費者に4つの質問をしてまわったそうです。

・”きもの”は好きか
・”きもの”着たいか
・この1年”きもの”は買ったか
・この1年”きもの”は着たか

 

このアンケートから、着物を好きで買いたいが、買ってもしないし、着てもないという事実が分かったそうです。そして、さらに深堀していくと、このアンケートの結果は、2つの要因に絞られた。

 

・きものは高い
・きものは一人で着られない


この2つの要因を取り除けば、”きもの”の需要はまだまだ高いという事に気づくのです。つまり、ただ衰退していく業種だからと放置しておくのではなく、どうしたらこの状況が変わるのかを分析し、改善していく事が重要なのです。これは、どんな仕事においても通じる事なんです。

 


成功者は常にアンテナを張っている

これまで様々な成功者の書籍を読んできましたが、成功するにはきちんと理由がある事がわかりました。それは、常にアンテナを張り巡らせている事です。


つまり、間の前のビジネスチャンスを逃しません。そして、チャンスだと思ったら行動する事です。


中村さんは、当時、4つの質問により、”きもの”の潜在的需要がある事を確信したものの、どうやって顕在化していくか答えが出せずにいました。


そんな中、ブックオフのお店に入った時に、その店舗の大きさ、明るさ、お客の多さ、活気、すべてに驚かされ、それが古本屋であると知ると2度びっくりしたそうです。


そこで、「きものオフ」を作れば、着物が高い問題を解決できることに気づきます。


その後、ブックオフの坂本さんの講演を聞き、その予感を確信になったとあります。そして、実際に、社長自らライトバンに乗って、依頼のあったお客の家に訪問したのです。


この”きものオフ”はまだ実績がなく、手探り状態から始めています。書籍にもありますが、古着の買い取りを社員に指示したら、「それは体のいいリストラですか?」と聞き返されたかもしれないとあります。


ここで感じたのは、社長自ら行動する事だったのではないかと思います。実際、着物を買い取りに行って、現場の経験をし、顧客と直接話すことで、成功へのイメージが明確になったそうです。


実際、ダメな会社や組織の上は、指示が曖昧である事があります。これも、思いつきで、イメージが固まっていない事が多いのです。


そして、そこからが”リサイクルきもの”を成功させる為に必要な、問題を解決していく事だったのです。

 

うまくいかない事を環境のせいにするのは簡単ですが、その問題点を見つけ、改善していく事は意外と簡単ではありません。


特に、組織や会社が大きければ大きいほど、変革は難しくなるのではないでしょうか。


例えば大手企業だと、判断がどうしても遅くなり、赤字続きの事業を継続してしまうという事が往々としてあります。その為、会社のトップは、常にその事業の状態を把握し、継続する価値があるのかを見極めていかなければなりません。


この書籍では、戦前からある東京山喜という呉服問屋を、見事に改革を起こして新しい事業を立ち上げたのです。


東京山喜の3代目社長の中村さんは、きもの市場が縮小している事を感じ、今の”きもの”に対する顧客のイメージを変える事で、きもの市場を逆に成長させていくことになります。


これもすべて問題を見逃さず、改善していく高い意識によるものだったのです。

 


問題を解決していく事でビジネスが生まれ変わる

中村さんは、世間で”きもの”離れが進む理由をアンケートにより知る事になります。


そして、そのアンケートから分かった着物市場の問題点を解決する為に、リサイクル着物のビジネスを立ち上げます。


そして、リサイクル着物をいざ始めてみると、様々な問題にぶつかるのです。


普通の人であれば、ビジネスをスタートさせ問題点ばかりであれば、稼げないとすぐに判断して、止めてしまう可能性があります。しかし、中村さんは、新しいビジネスは絶対に成功するという強い想いがあった為、様々な問題から目を背けず、解決していくことで、ビジネスの完成度を高めていきます。


例えば、着物を買い取る場合、それまでたんすの奥に長い間しまわれていた場合、ダニやカビ、防虫剤などの臭いがしっかりとこびりついている事があるそうです。


普通に考えたら、そんな着物はどんなに安くても買いたくないですよね。そこで、きもの専業の洗い屋さんに交渉し、買い取った着物や帯を、丸洗い、殺菌、抗菌、消臭加工、しみ抜きをした後、検針、ブレスまで、格安でおさめることに成功したのです。


また、寸法の問題もあったそうで、買い取る着物を着ていた人の年代と、今の若い人の平均身長が異なる為、そのまま利用する事は難しい。


そこで、買い取ったものは、SS、S、Mサイズが多かった為、新品はLサイズを通常よりも多めに仕立てる事で、全体のバランスをよくして、170cm程度のお客にも対応できるようにしたそうです。


これも、高い問題解決能力によるものではないかと思います。


また、呉服屋は生地から仕立てるので、きものに袖を通すまで時間がかかるそうです。しかし、リサイクルきものの”たんす屋”では、購入したらすぐに着れる状態で販売しているので、顧客の購買意欲を高める要因を作っている。

 


自分のビジネスを成功させる様々なアイデア

書籍にも書かれていますが、”たんす屋”が成功した理由は、陸続きのビジネスだったからだとあります。つまり、全く新しいビジネスに手を出すのではなく、これまで培ったビジネスのノウハウを活かしながら、新しいビジネスを作り上げる事。


成功を夢見る人たちは、突拍子もないビジネスアイデアが稼げると考えている人がいると思います。しかし、実際は、ビジネスは今自分が携わっているビジネスでも創意工夫を繰り返す事で、さらに成長する事は可能なのです。


ただ、一つ難しいのが、自分のビジネスを客観的に見る事ができなくなる事です。セブンイレブンの会長である鈴木敏文さんも、長く働くことで顧客の視点が失われてしまう事を言っていました。


顧客の為のビジネスがいつのまにか、自分たちの都合で考えるビジネスになっているという事はよくあります。その為、常に顧客を満足させるビジネスへと改善していく必要があるのです。


かのスティーブジョブズも、商品開発においては妥協を認めなかったように、顧客を満足させるサービスは、一朝一夕でできるものではありません。


それだけ、提供するサービスにこだわりをもって、ビジネスの質を高め続ける必要があります。それは、楽でないからこそ、他のビジネスを圧倒する結果を出せるのではないかと考えます。


隣の青く見える芝生を見ているだけでなく、自らの芝生をきちんとメンテナンスしていくことこそが、ビジネスにおいて重要だと学ばせてもらった良書でした。


この一冊は、手元においておいて、時間が経ったら、再び読みたい、そんな一冊です。